静脈疾患

1)下肢静脈瘤

2)肺塞栓症、深部静脈血栓症

下肢静脈瘤とは?

下肢静脈は深部静脈と表在静脈があり、重力に逆らって心臓に血液を戻しています。下肢静脈には、逆流を防ぐために静脈弁が存在します。静脈弁が壊れることで血液が逆流し、その下の静脈が拡張する病気を下肢静脈瘤といいます(図1)。女性や高齢者に多く、遺伝することも判明しています。また、長時間の立ち仕事を行っていた方、妊娠・出産を経験された方などは発症の頻度が高くなります。症状としては、静脈の拡張、痛み、むくみ、しびれ、かゆみ、皮膚色素沈着などがあり、ひどくなると皮膚潰瘍を認めることもあります(図2)。

血管内レーザー焼灼術とは?

治療法として、従来は弁機能不全をおこした静脈を除去する手術がありましたが、傷跡が大きく、1週間程度の入院が必要でした。そこで最近施行しているのが、血管内レーザー焼灼術による治療です(図3)。2011年1月から保険適応となり、当院でも2012年4月から治療を行っております。血管内に光ファイバーを通し、内部からレーザーにて血管を焼いて閉塞させる治療です。小さくかつ少ない皮膚切開で痛みや傷跡が少なく、美容面に優れ、日帰り治療が可能なメリットがあります。診療当日に手術しても当日歩いて帰宅できます。帰宅後、家事や散歩などの日常生活が可能です。また、レーザー治療後、3週間は足の血行を改善する弾性ストッキングの推奨をしております。

当院心臓血管外科では平成26年1月7日より「下肢静脈瘤専門外来」を開設しました。血管内レーザー焼灼術実施医が手術治療を担当し、専門的な診療を行っています。

肺塞栓症とは?

心臓からの血液を肺に送り届ける肺動脈に、血液のかたまり(血栓)が詰まった状態を肺塞栓症といい、その結果、血流が滞って肺組織が壊死していく状態を肺梗塞といいます。原因としては、脚の静脈にできた血栓が心臓を介して肺に運ばれて起こることがほとんどで、長時間動かず同じ姿勢でいることで脚の静脈の血流が滞り、血栓ができてしまうと考えられています(このように脚に血栓ができた状態を深部静脈血栓症といいます)。一般的には、飛行機内のエコノミークラスのように狭くて動きづらい環境下で、長時間着席したままの状態でいることで生じることが多いため、エコノミークラス症候群とも呼ばれています。

治療法

肺塞栓症の症状としては胸の痛み、呼吸困難、咳が一般的ですが、重症の場合には意識を失ったり、命に係わったりこともあります。そのため急性の肺塞栓症では、緊急の治療が必要になります。呼吸管理のために酸素吸入を行うとともに、詰まった血栓を溶かす血栓溶解薬を使用し、血栓を溶かすだけでなく新たに血栓ができないようにするためにヘパリンやワーファリンといった抗凝固療薬を合わせて使用します(図4)。さらに深部静脈血栓症として脚に血栓が残っている場合には、血栓が肺に運ばれていくのを防ぐために、その通り道である下大静脈にフィルターという金属の傘を留置する方法があります(図5)。場合によっては手術治療を行うこともあります。飛行機や電車、バスなどに長時間乗る場合には、1時間に1回程度は足を上げ、足首を曲げ伸ばす運動をすることで血液の巡りが良くなり、血栓の形成を防ぐと言われており、さらに脱水状態も血栓をできやすくするため、こまめに水分を摂取することが大切とされています。

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