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心臓血管外科では

心臓血管外科で扱う疾患は大きく分けて以下の様になります。 心臓自体の問題 大動脈から末梢動脈にかけての問題 末梢静脈から大静脈にかけての問題 静脈疾患 また2016年度より適応症例に限っては、低侵襲心臓手術(MICS)も開始いたしました。具体的には、左開胸冠動脈バイパス手術<MICS-CABG>、部分胸骨切開下心臓手術、右開胸下心臓手術と言われるものです。MICSには傷口が小さく美容面、術後呼吸機能面、術後疼痛面などで利点がある一方で、手術手技的な問題や併存症や解剖学的に施行が難しい場合などの問題点もあるのも事実です。MICSのご希望がある場合には、適応含めてご相談・ご説明させていただきます。 様々な病気がありますが、適切な時期に十分な治療を行えば、元気な身体とその後の充実した生活を取り戻すことも可能です。内科医および外科医の両方の目から診て、手術を含めた最も適切な治療を選ぶことが重要です。手術が必要と言われるとさまざまな不安や疑問が頭をよぎると思います。当科では患者さんが十分に納得のいく様に説明し治療に移っていけるように心がけております。またセカンドオピニオンも含めて、これらの各疾患に対する専門的なご相談を受け付けていますのでお気軽にご相談ください。 外来連絡先:徳島大学病院 名称 連絡先 徳島大学病院(代表) tel; 088‐631‐3111 心臓血管外科 外来 tel; 088-633-7150 電子メール cvs.info@tokushima-u.ac.jp 初診の方 再来の方 外来診療担当医表 模式図の著作権について 当ホームページにおいて使用されている各種模式図のうち、「徳島大学病院」と記載されているものの著作権は全て徳島大学病院心臓血管外科に帰属いたしますので、無断転載を禁止いたします。 制作総責任者:徳島大学病院心臓血管外科 総務医長 菅野幹雄制作協力:徳島大学医学部医学科 上坂昌治 西山大喜

成人心臓疾患

患者さん本人、またご家族・周囲の方々が病気について正しい知識をつけ、理解していただくことは、病気と向き合い、治療をする上で、非常に大切なことです。 正常な心臓について ヒトの心臓は、全身へ酸素が豊富に含まれた血液を送る“ポンプ”の役割をする臓器です。心臓は4つの部屋からできており、それぞれの部屋の出口に弁がついていることで、逆流しない構造になっています。 血液の流れをみてみましょう。全身から心臓へかえってきた血液は、まず右心房に入ります。右心房から右心室へ、右心室から肺へと送り出されます(青い矢印→)。肺で酸素化された血液は左心房へとかえって来ます。そして左心房から左心室へ、左心室から大動脈を通り全身へと送り出されます(赤い矢印→)。全身の末梢で酸素を届けた後の血液は静脈を通って再び右心房にかえり循環します。この心臓の機能において、血液を体の隅々まで行きわたらせるためには、左心室がしっかりと圧をかけ十分な量の血液を送り出せるということが重要です。 心臓弁膜症 心臓の弁について 心臓の弁は本来、血液の逆流を防ぐためのものですが、加齢による変化や先天的な形の違い、そのほか様々な要因により弁としての機能が悪くなります。弁が硬くなり血液を送り出しにくくなるのが“狭窄症”、弁が閉じたときに隙間ができて逆流が起こってしまうのが“閉鎖不全症”です。4つの弁それぞれに“狭窄症”と“閉鎖不全症”が起こる可能性があります。これらを総称して、心臓弁膜症といいます。 当科では様々な弁膜症手術を行っていますが、ここでは手術件数が多い「大動脈弁狭窄症」と「僧帽弁閉鎖不全症」について詳しく説明します。 大動脈弁狭窄症 息切れ 胸の痛み 失神 めまい 心不全 突然死 これらは大動脈弁狭窄症でみられるキーワードです。どうしてこのようになってしまうのか。大動脈弁狭窄症では何が起きているのか。また、治療についても詳しく知りましょう。 1)病態 大動脈弁狭窄症では、左心室の出口にある弁(大動脈弁)に狭窄が起こり、心臓から全身に血液を送り出しにくくなっています。原因としては動脈硬化の進行によるものが最も多く、若年でも先天的な大動脈二尖弁による大動脈弁狭窄症を認めることもあります。左心室は狭い出口から同じ量の血液を送り出そうするため、より強く収縮し、大きな圧をかけることで、なんとか全身に血液を送り届けようとします。その結果、徐々に左心室の壁は厚く肥大していきます。心筋が肥厚したこの時点では基本的に無症状です。しかし、長期間この状態が続くと心臓は負荷を代償しきれなくなり、症状が出現し始めます。 左心室・左心房へは肺で酸素化された血液が肺静脈を通って流れ込んできます。左心室から満足に送り出せないことで血液はうっ滞し、その負荷が肺に及ぶことで患者さんは呼吸がしづらくなり息切れを感じるようになります。また心臓から全身へ送り出される血液量の減少と心筋の肥厚によって、心臓の筋肉自体にも十分な酸素を届けられず、胸の痛み(狭心痛)が出現します。さらに進行すると、脳へも十分な酸素を届けられなくなり、失神やめまいといった症状が出現します。そして心臓がポンプとして十分に機能していない状態、つまり心不全に至ります。症状が出現した後の自然予後として、一般的には狭心痛は5年、失神は3年、心不全は2年と言われています。しかしながら、突然死の経過をたどることもあります。 2)治療 手術適応 上記の様な症状がある場合*特に進行が早い場合には緊急的に手術が必要となることがあります。 はっきりとした症状がない場合でも重度の大動脈弁狭窄と判断された場合 ◎手術による治療には、主に次の2つがあります。 外科的大動脈弁置換術 (sAVR) 経カテーテル大動脈弁留置術 (TAVI) これら2つの手術の方法や特性について解説していきます。 2-1)外科的大動脈弁置換術(sAVR: surgical Aortic Valve replacement) 症例によっては右肋間小開胸による手術(MICS-AVR)も検討できます。 2-2)経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI: Transcatheter Aortic Valve Implantation) 80歳以上の高齢者で全身状態が悪い場合、他の重症疾患のため人工心肺を用いた手術を行えない場合などに適応になります。カテーテルという細い管を足の付け根の血管などから挿入し、大血管の中を通して治療を行います。カテーテルの先端にはTAVI用の人工弁が小さく折りたたまれています。X線の透視下で大動脈弁に到達し、人工弁を広げて、大動脈弁に重ねて植え込みます。 人工心肺を用いないため、体への負担が少ないことがメリットです。しかしながら、TAVIは新しい治療であり、X線の透視下で、正しい位置に正しい大きさの弁を植え込む知識と経験が必要となります。 治療の選択 全身状態や年齢などを含め特に制約がなければ外科的大動脈弁置換術(sAVR)を標準治療としています。 外科的大動脈弁置換術(sAVR)に比べ、経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)の方が、低侵襲とされていますが、解剖学的な制約等から適応できない場合もあります。 外科的大動脈弁置換術(sAVR)に用いる弁の方が耐久性に優れるという報告もあり、TAVI弁の長期成績が世界中で調査されています。 上記などを考慮し、それぞれの患者さんに最も良い方法を適応することとしています。 僧帽弁閉鎖不全症 息切 起座呼吸 心房細動 動悸 心拡大 心不全 これらは僧帽弁閉鎖不全症でみられるキーワードです。どうしてこのようになってしまうのか。僧帽弁閉鎖不全症では何が起きているのか。また、治療についても詳しく知りましょう。 […]

小児心臓疾患

徳島大学病院心臓血管外科では1986年(昭和61年)に第二外科から独立する以前から現在まで数多くの先天性心疾患手術を行ってきました。 当院における小児心臓血管外科医療の基本方針としては ◎ 全ての種類の先天性心疾患に対応する。◎ 徳島県内及び近隣の患者さんは出来るだけ徳島で治す。◎ 難しい病態でも出来るだけ分かり易く説明し理解していただく。 上記について常に心がけて日々診療を行っています。 先天性心疾患のお子さんが生まれてくる確率は、出生100人に1人(約1%)と言われており、その原因には染色体異常のような遺伝要因によるものが全体の約13%、風疹や薬剤、喫煙などの影響によるものが約2%と言われていますが、残りの85%の原因ははっきりとはわからないということになります。先天性心疾患を発症した患者さんは皆治療が必要という訳ではありませんが、半数以上はいずれかの時期に手術を要するとされています。 正常な心臓について 心臓は血液を体中に循環させるポンプとしてはたらいています。主に心筋という特殊な筋肉でつくられており、弁や壁により仕切られた4つの部屋(左心室、右心室、左心房、右心房)からなっています。また4つの大きな血管(大動脈、肺動脈、上大静脈、下大静脈)により体と肺につながっています。 全身でから還ってきた血液は酸素が少なく、これが右心室から肺へ送られ酸素化され、酸素の多い血液として左心室に戻ってきます。その血液が再び全身へと送られます。 それぞれの心室には入り口と出口に弁があり、血液が逆流するのを防いでいます。また正常な心臓では酸素の少ない血液(静脈血)と酸素の多い血液(動脈血)は心房中隔、心室中隔という壁に隔てられ混ざり合うことはありません。 先天性心疾患の分類 先天性心疾患は、心臓の壁に穴が開いているだけの単純なものから、それに加えて弁や血管まで病変を有していたり、本来4つあるべき心臓の部屋が少なかったりするような複雑なものまで多種多様ですが、次のように分類することが多いです。 1) 非チアノーゼ性心疾患 心臓内の壁、すなわち右心房と左心房を敷居している心房中隔や右心室と左心室を敷居している心室中隔に穴が開いているため、血液が左心房から右心房、左心室から右心室へと短絡することになり肺への血流が増加します。このため、穴が大きいほど肺はうっ血し、左心房や左心室の負担が増え、多呼吸、発汗過多、哺乳力低下、体重増加不良などを来す心不全を生じます。 代表的な疾患に、心房中隔欠損症、心室中隔欠損症、房室中隔欠損症、動脈管開存症があります。中でも、心室中隔欠損症は、先天性心疾患の中で最も多く、全先天性心疾患の50~60%を占めると言われています。 《例:心室中隔欠損症》 心室中隔欠損を介して肺への血流が増加します。結果として肺から還流する血液が非常に多くなり左心室へ強い負担がかかります。また肺への血流が多いことで肺高血圧を来たし肺血管にも障害が起きます。多くは乳児期に手術治療を必要とします。 心房中隔欠損症 心室中隔欠損症 房室中隔欠損症(心内膜床欠損症) 動脈管開存症 2) チアノーゼ性心疾患(二心室疾患) チアノーゼとは、顔や全身の色調が悪く、特に唇や指先が紫色になる状態を指します。健康な人でも、寒いところに長時間いたりするときなど末梢の循環が悪くなると生じますが、先天性心疾患におけるチアノーゼとはいわゆる全心的な低酸素血症のことを言います。代表的なチアノーゼ性心疾患としてはファロー四徴症がよく知られていますが、全身から還流してきた血液の一部が右心室からそのまま大動脈の方向へと流れます。酸素の少ない血液(静脈血)と酸素の多い血液(動脈血)が混ざり合って全身へと送り出されるので、常に酸素濃度の低い血液が常に全身を流れるため、結果として皮膚の色や唇の色が悪くなるわけです。チアノーゼがあると哺乳に時間がかかったり、泣いたり息んだりしたときに全身がまっ黒になり痙攣や意識消失をおこして非常に危険な状態に陥ることもあり、放置すると予後不良となる疾患がほとんどです。代表的な疾患にはファロー四徴症や完全大血管転位症、総肺静脈還流異常症など様々なものがあります。しかしその頻度は非チアノーゼ性心疾患よりも少なく、単心室疾患によるチアノーゼ性心疾患を含めても全先天性心疾患の30~40%程度です。 《例:ファロー四徴症》 心室中隔欠損、右室流出路狭窄があるため肺への血流が減少します。 また全身から還流してきた血液の一部が再び全身へと流れるため低酸素血症(チアノーゼ)を来します。 ファロー四徴症 完全大血管転位症 総肺静脈還流異常症 3)チアノーゼ性心疾患(単心室疾患) 通常は心臓は二つの心房、二つの心室を持っています。しかし先天性心疾患の種類によっては何らかの異常により左右どちらかの心室が著しく低形成となることがあります。または心内の構造があまりに複雑であり二心室の形態に修復することが困難な場合があります。この場合には単心室疾患として治療する必要があります。単心室の患者さんは出生後は一つの心室から肺と全身の両方へ血液を送り出す必要があります。ただし心室一つ分としては仕事量が多く非常に強い負担になるばかりか、せっかく肺へと送り酸素が多く含んで還ってきた血液が再度酸素の少ない血液と混ざり合ってしまうため非常に効率が悪い循環となっています。このため単心室として最も効率の良いとされているフォンタン循環を目標として治療を行っていくこととなります。フォンタン循環とは一つの心室は全身へ血液を送ることに専念し、肺への血流は心室を介することなく上大静脈、下大静脈から直接流れることを基本とします。出生直後にフォンタン循環を成立させることは難しいとされており通常は2歳くらいまでかけて3段階に分けて手術治療を行うこととします。 《単心室循環》 全身から還流した血液と肺から還流した血液が心房、心室で混ざり合い非常に効率が悪くなります。一つの心室が二つ分の仕事を行う必要があり、この点でも非効率的です。全身と肺への血流バランスが悪いと心不全や低酸素血症となります。状況によってはこのバランスをとるための手術治療が必要となります。 《グレン循環》 最終目標であるフォンタン循環の前に行う手術です。上大静脈を肺動脈と吻合し、上半身血が直接肺へ流れる様にします心臓への負担が軽減することと、肺への血流量が安定することで全身状態が改善します。 通常は生後6ヶ月程度で行います。 《フォンタン循環》 下半身から還流する血液を人工血管を介して肺へと誘導させます。全身から還流した血液のほとんど全てが肺へと流れるため低酸素血症(チアノーゼ)が改善します。フォンタン循環における酸素飽和度の最高値は95%程度とされています。全ての血液が心室を介さずに肺へと流れる必要があるため、全身の静脈圧が高いことが必要となります。 三尖弁閉鎖 左心低形成症候群 無脾症候群 手術方法について 心房中隔欠損症や動脈管開存症では、カテーテル治療が行える場合もありますが、ほとんどの先天性心疾患の治療には手術が必要です。もちろん、手術が必要かどうかは疾患の種類や症状の重症度によって変わってきます。基本的には根治手術(心内修復術)を目標として施行しますが、疾患によっては数段階に分けての手術治療を要する場合もあります。(姑息的手術) 細かい手術方法は各疾患の詳細ページで説明します。先天性心疾患はその種類も重症度も様々ですから、治療も緊急を要するものから急ぐ必要のないものまであります。我々は、当院小児科の循環器専門医と綿密に連携を持ち、患者さんの病態、年齢、体格などを十分に考慮した上で治療方針を決定し実践しています。 手術方法 胸骨正中切開 胸の中央にある胸骨という骨を縦に切開して心臓を露出させます。大半の心臓手術はこの方法で行います。疾患の種類や体格などによっては胸骨を部分切開し皮膚の切開範囲を縮小して行う場合もあります。⇒小切開手術について 肋間開胸(横向きに寝て左胸の切開) 左側の肋骨の間からアプローチして左肺を避けた状態で行います。動脈管開存症や一部の大動脈弓手術などの際に行います。 肋間開胸(仰向けに寝て左前胸部の切開) 一部の動脈管開存症手術などの際に行います。 肺を圧迫することがないため呼吸状態への影響が少ないとされており、低出生体重児(2500g未満)における手術の際に行います。 人工心肺について 多くの心臓手術では循環や呼吸を補助するために人工心肺を使用する必要があります。 […]

大血管疾患

大血管疾患はほとんどが大動脈の疾患で一般的には下記のような疾患があります。いずれも放置しておくと死に至る可能性があり、適切な時期に治療の必要があります。従来は胸やお腹を大きく切って人工血管に置き換える人工血管置換術が唯一の治療方法でしたが、現在は体への負担が少ない低侵襲治療であるステントグラフト治療が可能となってきています。徳島大学グループでは2000年頃から手作りのステントグラフト治療を開始し、2007年には四国で初めて腹部大動脈瘤に対する企業製ステントグラフトの留置に成功し、2008年には四国で初めて胸部大動脈瘤に対する企業製ステントグラフトの留置に成功しました。それ以後、従来の外科手術とステントグラフト治療を組み合わせたハイブリッド手術、開窓型ステントグラフト手術など最先進的な治療の導入を行ってきております。当院ではできるだけ体への負担が少ない低侵襲治療を心がけておりますが、確実な治療を行うことが重要で、患者様個々の病態に合わせた最適な治療を行うことが大切と考えております。 胸部大動脈瘤 腹部大動脈瘤・腸骨動脈瘤 大動脈解離 大動脈の解剖 人工血管置換術とステントグラフト治療の長所と短所   人工血管置換術 ステントグラフト治療 長所 30年以上前から行われている。手術で安定した成績がある。 動脈瘤の形態に左右されない。 創が小さい。 低侵襲であり、負担が少ない。 手術リスクが低い。 社会復帰が早い。 短所 創が大きい。 侵襲が大きく、体への負担が大きい。 手術リスクが高い。 再開胸、開腹を要する合併症が起こる場合がある。 動脈瘤の場所、形態によって適応できない場合がある。 新しい治療方法であり長期成績が不明である。 追加治療が必要になることがある。 腎機能を悪化させる可能性がある。 胸部大動脈瘤 横隔膜より頭側の胸部大動脈に生じる動脈瘤です。大動脈瘤の場所によって治療方法が大きく異なってきます。上行大動脈瘤、弓部大動脈瘤は人工血管置換術が適応となります。下行大動脈瘤はステントグラフト治療が良い適応となります。ただ胸部大動脈瘤の人工血管置換術は人工心肺装置という器械を用いて体外循環を行うことが必要で体への負担が大きく、胸部大動脈瘤の治療こそステントグラフト治療の有効性が発揮できます。しかしまだまだステントグラフト治療の適応にならない場合が多いのが現状ですが、弓部大動脈瘤に対しては頚部分枝(脳や上肢につながる血管)へのバイパス術を組み合わせることによってステントグラフト治療が可能となってきております。 弓部大動脈瘤に対する頚部分枝バイパスを併用したステントグラフト治療 腹部大動脈瘤・腸骨動脈瘤 通常腎動脈より尾側の大動脈に生じる動脈瘤がほとんどで、大動脈瘤の中で最も多い動脈瘤です。大動脈瘤の形態、場所によって人工血管置換術またはステントグラフト治療の適応となります。ステントグラフトの進歩、中期成績の確立によってステントグラフト治療が主流になってきております。大動脈瘤の形態、場所がステントグラフト治療に適さない場合でも高齢の方、合併症をもっている方など人工血管置換術のリスクが高い場合は特殊な技術を用いてステントグラフト治療が可能です。 Snorkel法 腎動脈直下腹部大動脈瘤に対する腎動脈ステントを併用したステントグラフト治療 開窓法 腎動脈直下腹部大動脈瘤に対する開窓型ステントグラフトを用いた治療 大動脈解離 大動脈解離には急性A型解離、急性B型解離、慢性A型解離、慢性B型解離があります。解離とは3層構造をした大動脈壁が2層にはがれる病態で、解離がおこってすぐの状態を急性、解離が起こって一ヶ月以上経っている状態を慢性といいます。基本的には急性A型解離は保存的治療では死亡率が高く緊急手術が必要です。急性B型解離は降圧安静による保存的治療で急性期は状態が安定することがほとんどです。したがって慢性A型解離は非常にまれですが、急性B型解離は慢性B型解離へと移行します。慢性B型解離は発症時の形態によっていろいろな状態に移行し、今度は破裂する可能性が生じてくる場合があります。慢性B型解離の人工血管置換術は広範囲で過大な手術となり手術成績が悪く、そういった背景から最近では破裂する可能性がある慢性B型解離になる前に、比較的早期にステントグラフト治療を行うという考えがでてきております。

末梢血管疾患

下肢閉塞性動脈硬化症(ASO: arteriosclerosis obliterans) について 定義 下肢閉塞性動脈硬化症は、中年以降の男性に多い病態で、足の血管に動脈硬化が起こり、血管が細くなったり、詰まったりして、足に十分な血液が流れなくなることで発症する病気です。軽い場合には冷感、重症の場合には下肢の壊死にまで至ることがある恐い病気です。また、動脈硬化は全身的に進行しますので、足の動脈硬化は心臓や脳の動脈硬化にもつながります。狭心症や心筋梗塞、脳卒中などを合併することが多く、経過の悪い病気と考えられます。 主な原因 喫煙、高脂血症、性別(男性であること)、高血圧、糖尿病、肥満など 症状 下肢の冷感や色調の変化を認めることが初期症状であり、進行すると間欠性跛行症状(数十から数百メートル歩くと痺れや痛みのために歩行継続不可能になる状態)が出現し、さらには安静時にも疼痛を自覚するようになり、最終的に下肢の壊疽、皮膚潰瘍などが出現します。 診断 まず、問診で足の症状(歩くと片側の足が痛い、冷感がある、しびれるなど)をお話ください。触診では足の脈拍の左右差や足の皮膚温を調べます。また、下肢閉塞性動脈硬化症では足の血圧が低くなっている場合もありますので、血圧を測定するときに同時に足の血圧も測定し、ABPI(Ankle Brachial Pressure Index:足の血圧と腕の血圧の差)を検査します。この他、下肢の動脈の血流を超音波で評価したり、CT検査、MR検査、さらにカテーテルを使った血管造影検査などの検査を行います。 治療法 病期や病態に応じて治療方法は異なります。 まずはバランスのとれた食事や適度な運動を心がけ、禁煙に努め、高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣における動脈硬化の危険因子をコントロールしていきます。 それで改善されない場合は、動脈硬化を予防する薬である抗血小板薬などを使った薬物治療が行われます。症状の改善が得られない場合には、バルーン拡張やステント留置による血管内治療や、血管バイパス術などの外科的手術が選択されます。 当院の特色 詳細な問診・触診に加え、画像検査の結果をもとに、患者様一人ひとりにあった最善の治療方針を提案させていただきます。外科医が血管内治療からバイパス手術まで一貫した治療を行います。また、動脈瘤に対してのステントグラフト治療を行う際に、下肢閉塞性動脈硬化症を合併している場合には、可能な限り同時手術で、治療にあたらせていただきます。

静脈疾患

1)下肢静脈瘤 2)肺塞栓症、深部静脈血栓症 下肢静脈瘤とは? 下肢静脈は深部静脈と表在静脈があり、重力に逆らって心臓に血液を戻しています。下肢静脈には、逆流を防ぐために静脈弁が存在します。静脈弁が壊れることで血液が逆流し、その下の静脈が拡張する病気を下肢静脈瘤といいます(図1)。女性や高齢者に多く、遺伝することも判明しています。また、長時間の立ち仕事を行っていた方、妊娠・出産を経験された方などは発症の頻度が高くなります。症状としては、静脈の拡張、痛み、むくみ、しびれ、かゆみ、皮膚色素沈着などがあり、ひどくなると皮膚潰瘍を認めることもあります(図2)。 血管内レーザー焼灼術とは? 治療法として、従来は弁機能不全をおこした静脈を除去する手術がありましたが、傷跡が大きく、1週間程度の入院が必要でした。そこで最近施行しているのが、血管内レーザー焼灼術による治療です(図3)。2011年1月から保険適応となり、当院でも2012年4月から治療を行っております。血管内に光ファイバーを通し、内部からレーザーにて血管を焼いて閉塞させる治療です。小さくかつ少ない皮膚切開で痛みや傷跡が少なく、美容面に優れ、日帰り治療が可能なメリットがあります。診療当日に手術しても当日歩いて帰宅できます。帰宅後、家事や散歩などの日常生活が可能です。また、レーザー治療後、3週間は足の血行を改善する弾性ストッキングの推奨をしております。 当院心臓血管外科では平成26年1月7日より「下肢静脈瘤専門外来」を開設しました。血管内レーザー焼灼術実施医が手術治療を担当し、専門的な診療を行っています。 肺塞栓症とは? 心臓からの血液を肺に送り届ける肺動脈に、血液のかたまり(血栓)が詰まった状態を肺塞栓症といい、その結果、血流が滞って肺組織が壊死していく状態を肺梗塞といいます。原因としては、脚の静脈にできた血栓が心臓を介して肺に運ばれて起こることがほとんどで、長時間動かず同じ姿勢でいることで脚の静脈の血流が滞り、血栓ができてしまうと考えられています(このように脚に血栓ができた状態を深部静脈血栓症といいます)。一般的には、飛行機内のエコノミークラスのように狭くて動きづらい環境下で、長時間着席したままの状態でいることで生じることが多いため、エコノミークラス症候群とも呼ばれています。 治療法 肺塞栓症の症状としては胸の痛み、呼吸困難、咳が一般的ですが、重症の場合には意識を失ったり、命に係わったりこともあります。そのため急性の肺塞栓症では、緊急の治療が必要になります。呼吸管理のために酸素吸入を行うとともに、詰まった血栓を溶かす血栓溶解薬を使用し、血栓を溶かすだけでなく新たに血栓ができないようにするためにヘパリンやワーファリンといった抗凝固療薬を合わせて使用します(図4)。さらに深部静脈血栓症として脚に血栓が残っている場合には、血栓が肺に運ばれていくのを防ぐために、その通り道である下大静脈にフィルターという金属の傘を留置する方法があります(図5)。場合によっては手術治療を行うこともあります。飛行機や電車、バスなどに長時間乗る場合には、1時間に1回程度は足を上げ、足首を曲げ伸ばす運動をすることで血液の巡りが良くなり、血栓の形成を防ぐと言われており、さらに脱水状態も血栓をできやすくするため、こまめに水分を摂取することが大切とされています。